Theoria | 2015

川田英二 / Eiji Kawada

会期
2015/12/12(土)〜 2015/12/26(土)
開廊時間
13:00 - 21:00
休廊日
水曜休廊

【Artist Statement】

随分以前からモチーフに使っているセイタカアワダチソウ(キク科)、ツンっと伸びた長い茎と、先に広がる円錐形の花群、自生している場所や時期によっては、下部の葉は枯れ落ち茎のみとなっている。そんな形状に魅かれ、何度となく作品に使ってきたが、その生態についてはうろ覚え程度の記憶だったので調べてみることにした。「北米原産の外来種、繁殖力が旺盛で在来種をはね退け、群生域を拡大し、秋には花粉症の原因として忌み嫌われていた。」ことぐらいは知っていたが、実際は、花粉は重くて風には乗らず、昆虫を媒介して運ばれる虫媒花である為、花粉症の原因には当たらない。1970年代には土手や空き地をほぼ一種で独占していたが、近頃ではそれも随分収まってきた。他の植物の発芽を抑える化学物質を根から分泌させて繁殖を抑えるそうだが、その効果はセイタカアワダチソウ自身にもある為、一時繁栄していても、徐々にその数を減らし、周囲に溶け込んでいくのである。そして様々な効能、食べてよし(てんぷら、お浸し)、煎じて飲んでもよし、入浴剤としても、アトピーなどに効果があるそうだ。つまらない先入観で誤解をしていたが、話してみると案外良い人(背高泡立ち草)だった。前置きが長くなってしまったが、今回モチーフにはじめて使ったイラクサ科のカラムシ*(DM作品)は在来の植物であるが、セイタカアワダチソウ同様に旺盛な繁殖力で、根元から刈り込んでも、次々と新芽が伸びてくるので厄介な雑草であることに加え、セイタカアワダチソウと違って、風媒花であるカラムシが大量に群生している地域では、花粉症の原因にもなっている。しかし、このシュッとした茎と、そこから枝分かれした葉の付き方に、これまた何とも言えない美しさを感じて、今回の作品に使ってみた。そしてカラムシについても調べてみると、なんと6千年も昔、縄文時代からこのカラムシを栽培し、繊維を取り、衣類や紙の原料として生産されていたそうだ。カラとは茎のこと、ムシは蒸し、茎を蒸して、繊維を取り、布や紙を作っていた。時代が経つにつれて、絹や木綿などに生産が移行していったのだろう。現在ではほとんど栽培もされず、厄介な雑草と化している。長年会社の為に働いてきたのに時代の変化について行けなかったおじさんサラリーマンのようでもあるが、カラムシはおじさんでも、サラリーマンでもなければ、定年もない。アーティストのおじさんは沢山いるが、流行り廃りで作家をやっている訳ではない。生涯現役はカラムシも私も同じである。(*同じイラクサ科にヤブマオという植物があるが、カラムシとは近種であり、さっぱり見分けがつかない。ヤブマオの可能性もあり。)

川田英二 | Eiji Kawada

画像キャプション
Theoria 015-03 (部分) / ステンシルアクアチント / 85×36×3.5cm / 2015年