黒田恵枝 / Yoshie Kuroda

廃棄衣類を主な素材として、ぬいぐるみや人形、彫刻などの立体造形の概念を横断する創作形態に取り組む。 空想の生き物である「もけもけもの」、また、それらを用いたインスタレーションを発表。


【Artist Statement】

私の作品タイトルである「もけもけもの」とは、使われなくなった衣類を素材に、動物や人体のパーツなどをつくり、それらを繋ぎ合わせる事で生まれる空想の生き物です。「もののけ」と 「けもの」から「もけもけもの」という言葉が生まれました。

彼らは、個々の存在や成り立ち、他者や自身を取り巻く環境との関係性など、不確かな自身の存在に対し常に答えを求め続ける私たちの分身のようでもあります。
その姿かたちには、動物の造形を借りていますが、それらの仕草や佇まいには、どこか人間らしい存在感を宿しています。それは、彼らを通して私たち自身を見つめることができるのではないかと考えているからです。

素材として用いる、使われなくなった衣類とは、身につける人と日常を共にし、あらゆる出来事や思い出を経験蓄積している存在であり、同時に死者のメタファーでもあると考えています。そのような衣類が「手縫い」という時間と労力を伴うプロセスを経て再び生まれ変わる過程は、ある種の儀式や、祈りのような行為でもあると考えています。

そのようにして生まれた作品達は、生と死のどちらともを経験している存在、また、時に双方を自由自在に行き来し、それらがどのようなものであるかを私達に教えてくれる伝達者のようです。