fountain blue (boat) / 舟板、インク / 41.5×36×3cm / 2015年
伊藤正人
2015/07/04(土) 〜 2015/07/18(土) 13:00〜21:00 水曜休
Artist Comment
鳥のくちばしのようなペン先がちらりと光ってインクを放ち、紙のうえに染み込み、すうっと息を引き取るように乾いていこうとする瞬間、ロイヤルブルーはみずみずしく
発色する。インクが泉のようにずっと湧きつづけるという意味合いをもつその筆記具を、明治期のひとびとは「万年」という時間を帯びた言葉に託した。
じぶんが万年筆でものを書くようになってまもなくのころ、これで作品をつくろうと思い立って、最初に壁に書いた作品が「Royal Blue Mountain」というタイトルだったのだけれど、その「mountain」が万年筆の原語である「fountain pen」の「fountain(泉)」と一文字ちがいであったということは、つい最近になって気がついた。言葉に対するじぶんの鈍感さにうんざりしつつ、いつもそうやって、あらためて言葉を書きつけてから気づいている性分なのだからしかたないし、万年筆を十年使いつづけてようやく気づいていくことができたのだといえる。しかし、まだ万年にはほど遠い。そういうふうに言象に気づくまでの、あるいはロイヤルブルーのインクが乾くまでの時間というのは、水辺にゆらゆらと繋留されている舟のような、そこでしばらく羽を休めている鳥のような気持ちがする。気づいたときに、舟は発ち、鳥は飛んでいく。
伊藤正人 | Masato Ito