鏡の旅

ふるかはひでたか


2014/12/13(土) 〜 2014/12/27(土)
13:00〜21:00 木曜休



Artist Comment


 過去や歴史を思うとき、僕らはもやもやと形の知れぬものとして考えがちです。それでもひとつひとつの出来事に寄り添い、残された記録を漁って見えて来るのは、いつもいきいきとした人の姿だったりします。

 それでいつしか往古の人が見た景色や空気に憧れて“ふらり”と歩き出してしまうのです。

 今回、僕が追いかけたのは、二百年あまりも昔の船乗り。彼は十六ヶ月もの長きにわたり南の海に漂流したのち外国船に助けられ、カムチャツカまで送り届けられたものの、氷に閉ざされた北の海の向こうからひと冬、故郷を思い暮らしたのでした。

 彼の壮絶な漂流と帰途における異文化交流は「船長日記・ふなをさにっき」という江戸文政期の書物に活き活きと語られています。その巻末に、重吉が外国から持ち帰った品々が、絵に描かれて紹介されていました。

 その中に小さな手鏡をみつけたのです。

 可愛い文様を施した枠をもつその手鏡は、彼とともに旅をし、彼の見た風景をともに眺め、その銀鏡面に映しこんで来たことでしょう。

…もしも鏡に記憶があったなら、夢見るようにそれら海の風景を紡ぐだろうか。

 そんな想像のもと僕は重吉の手鏡を再現し、それを携えて旅に出ました。先ずは彼が向こう側から眺めた、流氷漂う北の海へ。そして彼の漂流した、途切れぬ水平線の果てに広がる南の海へ。

 今回の展覧会は、その旅の記録です。

 本展は写真を中心に、ドローイング、自作書籍などによって構成されます。これらは旅をしながら、過去と現代を往来するように思索するうち、自然に出来上がった「旅の記録」のかたちです。写真を見ながら旅景色を愛でるもよし。取材日記を読みながら旅のエピソードに浸るもよし。またモチーフにした「船長日記」も活字でご用意いたしました。みなさま思い思いの方法でお楽しみください。

ふるかはひでたか | Hidetaka Furukawa


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